“その人に合うケア”を探して。現場で磨かれたプロの選定基準 ――ケアビューティスト森さんの話

介護美容の現場では、使うアイテムひとつで、施術の心地よさや安心感が大きく変わります。

肌に触れるもの、空間に広がる香り、手元で使う道具——。
“何を使うか”は、単なるアイテム選びではなく、そのままケアの質につながる要素です。

今回は、東京や埼玉を中心に活躍するケアビューティスト・森さんにインタビュー。
実際の現場でどのようにアイテムを選び、どんな工夫を重ねているのか。その背景にある考え方を伺いました。


森 敬子さん
(2025年3月 介護美容研究所卒)

宝飾品販売や書籍販売会社勤務を経て、30年以上にわたり大手人材派遣会社でコンサルティング営業・キャリア支援に従事。2年前に介護美容と出会い転身、これまで培った対人支援の経験を現場に活かしている。

介護美容研究所入学後の取得資格:初任者研修修了/ガイドヘルパー/JNECネイリスト検定3級/JNAジェル検定初級/MUSEメイクセラピスト/フットケア理論検定/サロン衛生管理者/耳つぼジュエリー認定講師


現場に合わせて、“ちょうどいいケア”を探る

森さんが訪問しているのは、有料老人ホームを中心とした介護施設。
ケアビューティストとしてこれまでも多くの施設を掛け持ちしていましたが、現在は介護美容研究所でのアシスタント業務も兼任しながら、週3日ほど複数の施設へ継続的に通っています。

ひとことで「高齢者施設」といっても、その空気感はさまざまです。

大切なのは「自分が届けたいケア」よりも、「その場に必要とされるケア」を見極めること。アイテム選びも、その延長にあります。

メイクやネイルなら色味の華やかさ、アロマであれば香りの印象や強さ、施術中の高齢者への寄り添い方まで含めて、その場で“ちょうどいいケア”のバランスを調整していくのです。
森さんの、この柔軟な調整力が、多くの施設との継続的な関係づくりの土台になっています。

ケアアイテムは、低刺激を前提に選ぶ

ハンドケアやフットケアでは、お米由来のオイルを使用しているという森さん。
ただし、乾燥が強い場合には、オイルとあわせて別の保湿アイテムも併用しています。

森さんが取り入れているのは、敏感肌向けに開発された低刺激タイプの保湿乳液。
高齢者の肌状態に合わせて、やさしい使用感の保湿アイテムを使い分けているそうです。

顔用として使われることの多い乳液を、ハンドやフットケアにも応用する。
そこには、「誰にでも使えるかどうか」からさらに先、「その方の状態に合うもの」を選ぶプロの視点があります。

ネイルは「安全性」と「楽しさ」を両立する

ネイルは、介護美容研究所の教材としても採用されている胡粉ネイルを中心に使用。匂いなどの刺激の少なさと、扱いやすさを優先した選択です。

現場での胡粉ネイル人気色は、はっきりしたピンク系の京紅、やわらかな雲母桃、肌なじみの良い珊瑚など。「今日はいつもと違う雰囲気にしたい」と、空のような青色のおそらを選ばれるなど、おしゃれを楽しく冒険される方もいるそうです。

※胡粉ネイルシリーズは特別会員限定販売となっており、特別会員としてログインしている場合のみ商品ページが表示されます。

また、ご要望に合わせてネイルシールや簡単なアートを取り入れることも。

相手に合ったネイルの楽しみ方を提供できるよう、日々技術を磨き続けている森さん。安全性を第一にしながら、“選ぶ楽しさ”を感じてもらうための工夫も欠かしません。その両立が、ご利用者様にとって満足度の高いケア時間を生み出しています。

施術しやすい環境は自分でつくる

介護美容の現場では、設備が十分に整っているとは限りません。
そのため森さんは、「施術しやすい状態を自分でつくること」を大切にしています。

その代表的なアイテムが、授乳クッションです。

利用者様の膝に置き、その上に腕を乗せてもらうことで、姿勢が安定。車椅子の方でも、無理のない体勢でネイル施術ができるようになります。

さらに、施術環境にあわせて高さを調整できる折りたたみ椅子も持参。
限られた環境の中でも、一定の施術クオリティを保つ工夫を続けています。

香りは「空間」と「関係性」をつくる

森さんの現場で欠かせないのが、アロマの存在です。訪問時には必ずアロマディフューザーを持参し、ラベンダーの香りや、生活雑貨店で購入できるブレンドアロマを中心に活用しています。

香りを選ぶ基準は

  • 癖がなく、受け入れられやすいこと
  • アレルギーリスクが低いこと
  • 施設環境(ペットの有無など)にも配慮できること

一方で、ローズやジャスミンのように華やかな香りは、コスト面も考慮して日常使いには慎重。香りの選択にも、“世代による好みの違い”や、“季節や気分による好みの変化”があることを実感しているそうです。

そして、森さんの訪問における「香り」は、空間づくりだけでなく、ケアへの安心感や関係性をつくるコミュニケーションの役割も担っています。

言葉を交わす前から、「いつもの時間」が始まる合図にもなる。
香りをきっかけとしたブランディングが、介護美容のケア時間そのものをやさしく印象づけています。

続ける中で、見えてきたこと

森さんは、介護美容研究所の受講生時代に、ボランティアをきっかけとして現場活動を開始。現在の仕事につなげています。

こうした経験を振り返って特に感じるのは、“早く現場に触れること”の大切さだといいます。
施設ごとに異なる空気感やニーズに向き合いながら、その場に合うケアを細かく調整していく今の姿勢も、現場経験の積み重ねの中で培われていきました。

学んで得た知識だけでなく、実際の使用感を理解した上での提案力は、介護美容の現場で大きな強みになります。
そうした積み重ねが、相手に寄り添ったケア・現場で信頼されるケアにつながっていきます。


大切にしている“基準”があれば、現場で迷わない

森さんの話から見えてくるのは、「何を選ぶか」だけではなく、「なぜそれを選ぶのか」という明確な基準を持つことの大切さでした。

例えば、高齢者にとって刺激が少ないこと。
その場の空気感に自然と馴染むこと。
無理なく、安心して受け入れてもらえること。

介護美容では、アイテム選びひとつにも、細やかな配慮が表れます。
そうした積み重ねが、利用者様との信頼関係や、心地よい時間につながっていくのです。さらに、現場の雰囲気や一人ひとりの反応を見ながら、ケアのバランスを柔軟に調整していく。
その丁寧な姿勢が、“届けたい人に、きちんと届く” 森さんの介護美容を支えていました。

これから介護美容に関わる方にとっても、アイテム選びは最初の一歩です。
まずは、「なぜそれを選ぶのか」を意識してみること。
その視点を持つことで、現場の見え方や、ケアとの向き合い方も少しずつ変わっていくのかもしれません。


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