「美容をする日」が待ち遠しくなるように。愛される現場をつくるヒント ――ケアビューティスト桝井さんの話

介護美容の現場で使われるアイテムは、どんな基準で選ばれているのでしょうか。

肌へのやさしさ、施術のしやすさ、衛生面への配慮などは、欠かせない要素。ただ、今回お話を伺った卒業生ケアビューティスト・桝井(ますい)さんは、それらだけではない視点を持っています。

大阪を中心に訪問美容や高齢者施設で活動する桝井さんが大切にしているのは、「美容を受ける時間そのものを楽しんでいただくこと」。その想いが、現場へ持参するアイテム選びにも表れていました。


桝井 美記さん
(2023年3月 介護美容研究所卒)

元美容メーカー勤務。介護美容の理念に共感し、現在は訪問美容事業に従事。2024年度ミセス日本グランプリ受賞を機に美容との関わりをさらに深め、介護美容を通じて笑顔と元気を届ける活動に取り組んでいる。

介護美容研究所入学後の取得資格:ガイドヘルパー/一級着装講師(着付け講師)


まずは「美容が始まるワクワク感」をつくる

桝井さんは現在、さまざまな立場で介護美容に関わっています。
メインとしている訪問美容の個人活動では、複数の高齢者施設でケアや美容レクリエーションを提供。さらに、介護美容研究所がプロデュースする訪問美容サービス「care sweet(ケアスウィート)」でのオフィス業務にも携わり、現場で培った経験を幅広く活かされています。

そんな桝井さんの訪問美容は、その場の雰囲気を華やかに飾り、“第一印象を高める”空間づくりから始まります。
なかでも、現場に必ず持参しているのが「テーブルクロス」です。

参加者様が会場に来られたその瞬間に「わあ、素敵!」と心が動くような空間づくりを意識しているそうです。

その想いは、テーブル上の演出にも表れています。
例えばメイクの際には、実際に使用するミニパレットとは別に、 見た目が華やかな多色パレットを“見せる装飾”として活用。ネイルイベントでは、色とりどりのミニボトルをずらりと並べるなど、見ているだけでも心が弾むようなディスプレイを心がけているとのこと。

華やかな演出でワクワクと心を躍らせつつ、選択で迷わせない気配り。
その絶妙なバランスに、桝井さんらしいおもてなしの心が光っています。

コミュニケーションが生まれるきっかけを、あちこちに

初めて訪れる施設では、自己紹介の際に、趣味のフラダンスや阿波踊りを披露することもあるというチャーミングな桝井さん。介護美容という非日常の時間を安心して楽しんでいただくために、コミュニケーションを通じて場を和ませ、心の距離を縮めることを大切にしているそうです。

桝井さんの現場には、少し意外な“相棒”もいます。
それが、高齢者の心をひらくための「キャラクターのぬいぐるみ」です。

ケアそのものだけでなく、高齢者の方の笑顔や会話が生まれるひとときも、介護美容ならではの価値のひとつ。
桝井さんにとってぬいぐるみは、場の緊張をほぐし、会話のきっかけをつくってくれる心強い存在です。

さらに、高齢者お一人おひとりとの向き合い方にも、桝井さんのあたたかさが感じられるこだわりがあります。

会話のきっかけづくりも、呼び方への配慮も、その方らしく美容を楽しんでいただくための大切なアプローチ。その積み重ねが、場の安心感とやわらかな関係性をつくり出しています。

信頼して使い続けられるものを選ぶ「現場目線」

空間づくりやコミュニケーションを大切にする一方で、施術に使用するアイテム選びでは実用性も重視しているという桝井さん。
高齢者の肌に触れるものだからこそ、肌へのやさしさはもちろん、

  • 自分自身が納得して使えること
  • 継続して取り入れやすいこと

を慎重に見極めながら判断しています。

現在、桝井さんがフェイシャルやハンド・フットケアに取り入れているのは、米ぬか由来成分を配合した化粧水やマッサージオイルです。

「自分で選ぶ」という時間もまた、美容の時間を彩るひととき。その日の気分に合わせてケアの香りを選んでいただくことで、「選ぶ楽しさ」を感じてもらえるよう工夫しています。

さらにメイク用品では、ファンデーション・コンシーラー・フェイスパウダーの役割を一本で兼ねるスティックタイプのベースアイテムを活用。限られた時間のなかでもスムーズに施術できるため、頼りになるそうです。

また、介護美容研究所で学んでいた頃から長く使い続けているアイテムも。

学びのなかで繰り返し使用し、その特徴や使い心地を十分に理解しているからこそ、今も安心して選び続けられる――。現場経験を通して得た、確かな手応えと信頼感が、アイテム選びの大切な判断基準になっていました。

※胡粉ネイルシリーズは特別会員限定販売となっており、特別会員としてログインしている場合のみ商品ページが表示されます。

頑張りすぎないためのアイテム選び

ケアビューティストとして活動を続ける中で、桝井さんが大切にしていることがあります。
それは、「自分自身が無理をしないこと」。

訪問先は大阪府内だけでなく、京都や和歌山まで広範囲にわたる桝井さんですが、移動は電車が中心です。現場へ持参するアイテムが増えれば、その分だけ移動の負担も大きくなります。
多くの現場へ足を運ぶからこそ、荷物はできるだけ身軽にまとめたい。

日頃から「もっと良いものはないかな」とアンテナを張りながら、雑貨店などをじっくり見て回ることも多いという桝井さん。そのなかで見つけた不織布エプロンは、施設側からも「清潔で安心」と好評なのだそうです。

このようにアイテムを賢く選ぶことは単なる効率化にとどまらず、気持ちにゆとりを生み、現場へ向かうための“心持ち”を整えてくれるひとつの工夫にもなっています。

高齢者の方へ心地よい時間を届けるためには、まずケアビューティスト自身が楽しく活動できていることが何よりも大切です。
プロとして長く現場に立ち続けるために、自分自身の心と体にも目を向けること。
ケアを届ける側が心地よく働ける工夫もまた、質の高い介護美容を支える大切な要素になっています。

相手に寄り添って考えることが、介護美容の原点

インタビューの最後に、これから介護美容を学ぶ方へのメッセージを伺いました。

どこまでも相手の気持ちに寄り添い、美容を通してコミュニケーションを楽しむこと。
その積み重ねが、目の前の方の笑顔につながるのだと桝井さんは話してくださいました。


どんなアイテムを使うか。どんな空間をつくるか。どんな言葉をかけるか――。

介護美容のアイテム選びには、その人らしい「介護美容への想い」が表れます。
桝井さんの根底にあったのは、「どうしたら相手に喜んでいただけるだろう」とまっすぐに考え続ける姿勢でした。

ケアのその先にある笑顔を思い描きながら、心を込めて丁寧に準備を重ねること。
施術やレクリエーションが始まる前のアイテム選びから、その人に寄り添う介護美容の時間はすでに始まっているのです。


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